ラジオのかかる習字教室で

オープンと同時に習字教室に行くと、ラジオがかかっていた。どうやら東京の番組のようだ。この街にはない道路の渋滞情報を聞きながら、席に着く。お手本を見る。先週はここをこうするようにアドバイスをもらった、などと確認していると時報が鳴り、スピーカーから流れてくる声が一気に明るく元気良くなった。今週の練習の時間が始まる。1時間勝負だ。

今月のお題には手こずっている。ここまで滞りなく昇級を重ね、とうとう半紙に5文字書くようになったのは喜ばしい。しかしその分難易度が高くなったように思う。バランスを取るのも4文字書くのとは勝手が違うし、文字が増えたことで書きながら注意する箇所が増えた。

最近は自分の技術の乏しさが気掛かりで、筆の運び方をもっと練習したいと思っている。10回やったら10回同じに書けるように、できるだけバラツキのないように「とめ」や「はらい」をできるようになりたくて、最近はその点を教えてもらうことも多い。私はどうも筆を立てすぎらしい。それに、筆先の使い方がいまいちだ。もっと手首を使うというのか、柔らかくリズムを付けて筆を動かすようにしたい。自宅でも練習しようか。1週間に1回だと、どうしても薄れてしまう。書きながら思い出していくけれど、その時間がもったいない気がする。こういうとき、ゲームみたいに記憶や感覚をまるごとセーブできればいいのにと思う。

何枚か書いたところで、「今日のゲストは〇〇さんでした、ありがとうございました! 」とDJが言うのが聞こえた。ラジオはずっとかかっていたようだけれど、集中して書いていたからか番組の内容はわからない。しかしどうやらエンディングのようだ。もう1時間経つのかと、そこで初めて時計を見る。短い針がひとつ隣に移動していた。納得のいかない出来栄えだけれど、今日はここまでだ。次来るときには、転折と左右のはらいの筆づかいに気を配りましょう。会心の出来とまではいかなくても、自分の中で許せる1枚を書けることを目指して。

 

今週のお題「かける」