日記:桜の木

もう少しで花が咲く桜の木は、木全体がうっすらとピンク色を帯びるものだと思っている。これが科学的に正しいかどうかわからないけれど、少なくとも私の目にはそう映っている。

このピンク色だけれど、樹皮のすぐ下に花の色の素が潜んでいて、それが滲み出ているのではなかろうか。野菜や果物には皮と実の間に栄養が詰まっているというし、そういうことがあってもおかしくない気がする。ピンクの色味が一番濃くなるのは開花の一歩手前で、花が咲くと樹皮の色味は薄れる。樹皮に滲む色がそっくりそのまま花びらの色かと言われると少し違っていて、比較すると、花びらの色の方が薄い。だから、一番濃い桜色は花がひとつもついていない桜の木で見ることができる。

毎年のことだけれど、花も葉もなく、とにかくこれから咲くのだという桜の木は、力強さがある。年に一度の大仕事、蓄えたパワーを今開放せずしてどうする、くらいの気概に満ちている。これが花を咲かせれば凛と美しく、それが散り始めると一気に儚くなる。カメレオン俳優もかくや、とんでもない樹木だ。

3月も上旬が終わろうとしている。例年通りに桜の開花の時期が近付いているので、最近は通り道にある桜の木に注目している。木全体がうっすらとピンク色を纏っているように見える。立ち止まって枝先を見てみる。まだ花芽は固く閉じられているけれど、観察していたら徐々に内側から押し開くように膨らんでいくはずだ。去年は思うように桜の写真が撮れなかったので、今年はデジカメ片手にチャンスを逃さないようにしたいものだ。