ミス・サイゴン(博多座)感想

ミス・サイゴン 博多座公演を見てきた。

有名作品だし、一度見てみたいなと思って観劇したのですが、個人的には嵌らなかった。私向けではない。ミュージカル好きだし、ストーリーのあらすじも頭に入れて観劇したのだけれど、何でだろう? 

なんだかいまいちと思った理由は、クリスに苛ついたのと、表現やセリフ回しが生々しすぎたこと、作品世界の価値観が好きではなかったことかな、と分析している。あと舞台が全体的に暗くてちょっと見えづらかった。これは3階席だったからかもしれないけれど、なんかずっと薄暗い。ヘリコプターの場面がある関係かな? あとバンコクのシーンでネオンを吊り下げるからとか? 最後のカーテンコールが一番照明ついてた。

クリスは本当に何なのか。自分を可哀そうがって、周りの人の同情を引いたり気を使わせたりして、単純にやばい奴じゃん、と思った。ベトナムで従軍して帰国するも、周りが冷ややかでベトナムにUターン、傷つき鬱屈としていたのはわかった。それで一晩共にしたキムにそんな入れあげるかな。このあたりのクリスの感情ってあまり描かれてなくない? 何だか唐突な印象を受けた。他のシーンは自分で自分を擁護している感が目立つというか、自分のことしか見えていないというか。アメリカに帰って受け入れられなかったのって、時流もあったのだろうけど少なからずお前の性格のせいでは? とほんのり思ってしまった。この作品の中でクリスは女性ウケ悪そう。

セリフが結構刺激的。特に1幕のドリームランドの場面、2幕のバンコクの場面。そういう場所が舞台だからそうでしょうけれども。すみれコードのない世界ってすごい。気心の知れた友人と見に行くならいいけれど、そこまでではない友人知人と見に行ったらちょっと気まずくなりそう。

欧米から見たアジアのステレオタイプ&一昔前の男尊女卑的価値観のコンボが個人的にきつかった。これは私が日本人の女だから特にそう感じたのではないかと思う。見る人の属性によっては、そんなに気にならないことかもしれない。昔からある作品で、脚本に手を加えていなければ今の感覚と合わないのは当然だけれど、日本初演当時とかってどんな反応だったんだろう? 人気でなければ30周年記念公演なんてやらない気がするから、評価も高かったのかな。そういえば、ガイズ&ドールズのときも作品の価値観が古いわと思った気がする。昔からの名作は、娯楽として楽しむというよりも、勉強のために見るというスタンスの方が疲れないかもしれない。

全体的にネガティブな感想になっているけれど、俳優の皆さまの芝居・歌・ダンスがどれを取ってもすばらしいの一言だったということは、忘れずに書いておきたい。特にエレン役の松原さんが素敵だと思った。