日記:キンモクセイ香る頃

私が暮らす町でも、キンモクセイが咲き始めた。1週間前だろうか、風に乗って甘い香りがしたので、枝につぼみをつけ始めたのに気が付いた。開花してからは更によく香る。つるんとした緑の葉と小ぶりな橙の花のコントラストも鮮やかで嬉しい。本格的に秋が来たのだと思う。

姿以上に香りが印象的な花というのは、私はキンモクセイ以外にあまり思い浮かばない。梅の花も、キンモクセイ同様に季節の訪れを告げる花だと思うけれど、香りよりも膨らんだつぼみや開きたての花に気を惹かれる。桜も然り。樹木でなくてもそう。よく歩く道には、春ならチューリップやスノーボール、夏はハイビスカス、秋冬はハボタンやマリーゴールドなどが植わっているものの、香りで気が付くものはない。皆、姿かたちにまず目が行く。キンモクセイはその香りで存在を気づかせたうえで、何処にあるのだろうと思わせるのだから、なかなかあざとい花だと思う。もしあの芳香がなければ、これほど季節の変わり目に注目されなかったのかもしれない。